保管と管理

アコースティックギターの保管、管理について

取り扱いによっては、演奏や音質またギターそのものの寿命に大きな影響を及ぼします。
特に単板のアコースティックギターは2片の薄い木材を素材としており、ボディ材の厚みは、2mm〜4mmという薄さで仕上げられていますので、その薄さと表面積の大きさにより、湿度の影響をとても受けやすいものとなっています。

木材は、湿度が高いと膨張し、湿度が低いと収縮します。

アコースティックギターでみられる問題の多くは、湿度の影響で木材が膨張したり収縮したりすることが原因です。特に乾燥による症状がとても多いようです。また、合板で作られたアコースティック・ギターよりも、単板で作られたアコースティック・ギターの方が環境変化に対してより敏感ですが、その理由は、薄い材と薄い塗装で仕上げられているからです。

「保管に最適な温度・湿度は、摂氏22度、湿度40〜45%」

〜湿度が高い状態に置かれていると〜

ギター全箇所の接着強度が弱くなり、最悪はブレージングが剥がれてきます。
また、ボディが膨らみ、ブリッジの前後が膨らんできます。最悪はブリッジが剥がれ落ちることもあります。更に指板も浮いて演奏できない状態になることがあります。トップ面の膨らみは、弦を外して、サウンドホールとブリッジの間に定規を置くことでチェックすることができます。通常のトップ面はフラットか僅かの膨らみがありますが、定規を当ててトップ面のサイドの隙間が0.8mmから1.0mm以上あればトップ面が膨らんだ可能性があります。
膨張したトップ面によってブリッジが押し上げられ、さらにバック面も膨らむことでネックを押し上げるため、弦高が高くなってきます。また、ナットとサドルの間に歪みを引き起こします。また弦高が高くなることでネックジョイント部にかかる力が大きくなります。

※夏場の高温多湿時期の管理
ギターケースに入れたままにせず、ギタースタンドを使用して風通しの良い環境、ギターにとって最適な室温を保ちやすい状況下にて保管してください。  除湿機があれば使用して、湿度管理することが理想です。また、ギター用の乾燥材も有効です。

〜湿度が低い乾燥した状態に置かれていると〜

フレットが指板からはみ出てバリが引っ掛かるようになります。これは、指板の木材が収縮する一方で金属性のフレットは湿度によって収縮しないからです。また、トップ板とバックが沈み込み、それによって弦高が低くなりビリつきます。最悪は、トップ板がブリッジ付近から割れ始め、ブリッジは剥がれてしまう可能性があります。さらに、指板エンドもボディに沈み込む現象も発生するため、弦高はさらに低くなります。ロゼット・リングとテール・ウェッジが浮き上がる場合もあります。

※冬場の低温乾燥時期の管理
日本の冬場の時期には、高温の室内から氷点下のように極端に寒い場所へ急にギターをそのまま持って出た場合、高い確率でクラック(塗膜の割れ)が発生します。逆に氷点下の外から温かい室内へ戻り急にハードケースを開けた場合にも、やはり問題が発生します。
これを防ぐために、ギターを大きな温度変化がある場所へ移す時は、ハードケースに入れて移動させ、突然フタを開けないようにしてください。
その場の温度に十分に慣らしてから、ギターを取り出すようにしましょう。クラックだけの問題であれば音質には影響しませんが、トップ板の割れやブリッジの剥がれなどが発生した場合は、リペアマンに修理をお願いするしかありません。
【ギターの保管・管理で注意することは・・・】
1) 必ず湿度計を用意して、保管場所の湿度を認識しておきましょう。
2) ギターを保管する部屋に除湿器と加湿器を設置しましょう。
3) 床暖房には注意が必要です。床暖房の上にギターを置くことは絶対にやめましょう。
4) ギターは、夏場はケースから出し、冬場はケースに入れて保管しましょう。冬場に、ギターハンガーなどで部屋の高い位置に保管していると、暖房などの熱で急激に乾燥が進んだ状態に置かれていることになりますので注意が必要です。